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プレトニョフ:ラフマニノフのピアノ協奏曲 全曲演奏会第1夜を聴いて

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昨夜、オペラシティコンサートホールにミハイル・プレトニョフのコンサートを聴きに行きました。ラフマニノフのピアノ協奏曲 全4曲を2日間で演奏するコンサートの第1夜で、ピアノ協奏曲第1番と第2番です。プレトニョフは、現在生きている音楽家の中でも傑出した芸術家で、ピアニスト、指揮者、作曲家です。プログラムにも「一言では説明できない多彩な芸術家」とありましたが、実際に目の前でピアノを弾いている姿を目にしても信じられない感じです。人の心に心底響き、恐ろしいほど美しいpp(ピアニッシモ)を奏で、音楽の構造が手に取るように見えている演奏で、静謐で浄化されたようなラフマニノフでした。

ラフマニノフのピアノ協奏曲と言うと、数ある協奏曲の中でも特に華やかでドラマティック、ピアノもオーケストラも、ここぞとばかり大音量をかき鳴らす事も多いのですが、昨夜は「えぇ〜っ!!」と驚嘆するばかりの異次元の世界でした。誇張も妥協も一切なく、ただひたすら自身の表現を貫く演奏でした。

例えば、第2番のコンチェルトの第1楽章、出だしの8小節。おもむろに、何かが近づいてくるかの如く遅めに弾かれることが多いですが、プレトニョフは第1主題と同じテンポでサラッと弾いていました。「あれっ?」と思って帰宅後、楽譜を見てびっくり!! プレトニョフの演奏こそが、楽譜のテンポ設定でした。

第1楽章の後半、Allegro(アレグロ)になった部分も、普通だったらオケ対ピアノ!!、の如く大音量の合戦になるところですが、「ここのフォルティッシモはオケに任せるよ、僕の音は遠くで鳴ってるぐらいに聴こえれば良いのでよろしく.....」とでも言わんばかり。なのに、何故あんなに説得力のある演奏になるのでしょうねぇ..... 

第2楽章は、まるで「天上の音楽」でした。ゆったりした美しい分散和音に浸る感じの音楽ですが、プレトニョフのピアノには、神と対話しているような、魂を吐露するような、誰にも立ち入れない静けさがあります。2楽章の終わりに近づくアダージョからの部分では、無数の星がまたたいている夜空がふと目に浮かび、ため息も出ないほど美しい世界でした。

第3楽章は、ピアニストのテクニックの見せ所でもあり、エネルギッシュさが前面に出てきがちですが、プレトニョフの手に掛かると、いとも軽やかで洗練された格調高い音楽になってしまいます。異次元の技術に裏打ちされているからこそ、なのですが......(*´◒`*)  背付きのピアノ椅子に時折り背中をもたせかけ、脱力した弾き方なのに、必要な音はちゃんと聴こえてくる絶妙のバランスで、確固たる計算の元、オケとのやり取りがなされていました。

心の内で真に感じて生み出される音のみで構成された“いぶし銀“のような音楽を、一糸乱れず観客が見守り、生きてて良かった..... と心から思えるひとときでした。アンコールのソロも、つぶやくように静かにゆったりと弾かれ、余韻に浸りました。
               
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2023年09月14日 13:01

ある日のレッスン:ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」

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練馬区上石神井のピアノ教室は今年の11月オープンですが、江戸川区の教室では、以前からレッスンをしています。毎年行っている生徒さん達の発表会に向けて、社会人の生徒さんがラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」の曲を練習してきました。この曲は、フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルがピアノのソロ曲として作曲した作品ですが、ラヴェル自身がオーケストレーションしたオーケストラの作品もあり、ボレロと共に大好きな曲の1つです。

「亡き王女のためのパヴァーヌ」は独特の世界観があり、耽美的な作品です。葬送の哀歌ではなく、ラヴェル自身が「昔、スペインの宮廷で小さな王女が踊ったようなパヴァーヌを喚起するものだ」と述べています。美しく優雅な曲ですが、聴くのと弾くのではまるで大違い!実際に弾いてみると、意外に弾きにくく、イメージを自分のものにするのが難しい曲です。技術的には、ある程度すれば弾けるのですが、そこから先、自分が本当に感じるイメージと結びつける作業がなかなか大変です。

2021年に開催したピアノリサイタルで、後半のプログラムをラヴェルで構成し、1曲目に「亡き王女のためのパヴァーヌ」、メインに「クープランの墓」を演奏しました。メインディッシュの前のちょっと凝った美しい前菜のように....と思って「亡き王女のためのパヴァーヌ」の練習を始めたら、独特の世界観に入り込むのが何とも難しく.....(-.-;)  遠い遠い視線の世界観、ゆったりと流れる悠久の時間、古いお城をたっぷりしたドレスで歩く王女の姿.....など、自身の生活とかけ離れ過ぎて想像力で補えず..... ( ´Д`)  なんせ、お城を歩く王女様なんて見たことがないわけで、昔の宮廷を舞台にした映画を観たり、ラヴェルのインスピレーションになったベラスケスの絵画「ラス・メニーナス」をネットで探して見て見たり、お城の写真集を買って見たり.....   ジャンケレヴィッチが書いた「ラヴェル」という音楽専門書を読んだり....  この本は、物凄く中身の濃い本で大変勉強になりましたが難しかったです。

何か他にイメージになるものは?と試行錯誤していた時、ふと思い出した絵本がありました。。その昔、エロール・ル・カインという挿絵画家の絵本が大好きで買い漁ったことがあり、その中の「いばら姫」の挿絵に「あぁこんな感じかしらん?」という絵を見つけました。ピアノを弾く時に楽譜からイメージをどう膨らませるか?は個々の自由なので正解は無いのですが、その時の私には絵本の挿絵と音楽が嵌り、嬉しかったのを覚えています。ラヴェルはおとぎ話が好きで、シェエラザードやマ・メール・ロアなど、おとぎ話の音楽も書いていますしね......

エロール・ル・カインという挿絵画家の絵本は、とても素敵な絵が散りばめられていて、「いばら姫」は、いわゆる「眠りの森の美女」のお話です。他にも、一度見たら忘れられない挿絵の絵本が沢山あるので、ご興味のある方は書店でご覧になってみて下さい。

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2023年09月11日 12:06

映画「小説家を見つけたら」

久しぶりに映画「小説家を見つけたら」を観ました。この映画は、私の一番好きな映画の一つで、晩年のショーン・コネリー主演です。かなり渋めで静かな映画ですが、人と人の信頼関係や、凛とした人間の心の在り方などが描かれています。ショーン・コネリーは、若い頃から数々の映画に出ている名優さんですが、個人的には晩年の真っ白なお髭になってからの方が断然素敵♡に思えます!雑用に追われてちょっと心がワサワサしている時、この映画を見ると静かな気持ちになれます。

映画やドラマなどを見る時、登場人物の感情を一緒に擬似体験するようなところがありますが、ピアノの演奏も、同じような一面があります。音楽には、作曲家の意思や想いやインスピレーションを感じるものが抽象的に描かれていて、それは「文字」という媒体で表されていない分、より自由に表現できる面があり、それが芸術と呼ばれる領域だと思います。それは絵画も同じです。

楽譜の奥を読み取って、作曲家の想いを擬似体験するかのように感じているものは素直に音に表現できますが、なかなかそれを掴めない場合もあり、そこを苦心して探って行く過程も、音楽の難しいところでもあり、面白さでもあります。

映画やドラマを観て泣いたり笑ったり、本を読んで心を揺さぶられたり、絵画の世界に魅入られたり、仏像を観て静かな心になったり、旅に行って心が自由になったり、そういう体験が人の感受性を豊かにしてくれ、ピアノを弾く時の栄養になってくれます。

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2023年09月10日 12:22

「VIVANT」に使われているラフマニノフの曲について

最近、日曜の夜のドラマ「VIVANT」が話題になっていますが、このドラマの第2話の終わり頃から使われているラフマニノフの「鐘」という曲は、ピアノのソロ曲、前奏曲第1番「鐘」が原曲で、高校生の生徒さんにちょうどレッスンしているところです。ドラマではオーケストラに合唱も加わった大編成のアレンジで、より雄大な響きになっています。

8月に、この曲を高校生の生徒にレッスンしていた時のことです。いつもなら、作品の中身やイメージを説明したり、ここはどんな気分だと思う?と生徒に尋ねたりのレッスンになるのですが、生徒の演奏を聴いた途端、目の前にVIVANTの砂丘とラクダのシーンが浮かんでしまい、我ながら苦笑してしまいました。ロケ地のモンゴルの砂丘や真っ青な空の色など、見たこともない雄大な景色が鮮烈な印象でした。

ドラマでこの曲が使われたのは、追い詰められた堺雅人さん扮する主人公達が、これからラクダで砂丘を渡って生きるか死ぬかの過酷な試練に立ち向かう、というシーンです。暗雲たる雰囲気の、何か良からぬことが起きそうな暗示的なラフマニノフのこの曲はピッタリなのですが.....  ふとした瞬間、強烈な映像と音楽が結びついてしまい、その音楽を聴く度に、インプットされた映像が連鎖反応的に浮かんできてしまいます。

以前、松本清張原作の「球形の荒野」というスペシャルドラマでも同じような事がありました。田村正和さん、比嘉愛未さんらが出演され、原作が忠実に再現された質の高いドラマで、松本清張の原作も好きで何度もリピートしています。このドラマで使われていた音楽は、全てJ.S.バッハの作品で、元々私の大好きなJ.S.バッハのピアノ協奏曲第1番や、ピアノ(チェンバロ)のゴルトベルク変奏曲のテーマなどでした。現代のドラマに300年以上も前のバッハの音楽が見事にマッチし、バッハの普遍的でドラマティックな音楽の凄さを再確認した瞬間でもありました。ただ、その曲を聴くとドラマのシーンが浮かんでしまう現象は何年も経った今も続いており、一度着いてしまったこのイメージ、どうやったら消せるのでしょうねぇ....(-.-;)

ショパンの前奏曲第7番も、太田胃酸のコマーシャルの曲として定着してしまわれた方も多いのではないでしょうか? 今は亡き大作曲家のバッハやショパン、ラフマニノフは、自分の曲がバックミュージックとして使われるのをどう思っているのでしょう? 「俺の曲がこんな風に使われちゃってさぁ....」とぼやくのか、「俺の曲、もっともっと使っていいよ」とにんまりするのか、天に思いを馳せています。

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2023年09月08日 12:06

9/5 東京文化会館小ホール ピアノリサイタルを聴いて

田代慎之介ピアノリサイタル
東京文化会館小ホールで行われたピアノリサイタルを聴いて来ました。モーツァルト、バルトーク、ラフマニノフとの作品で構成されたプログラムでしたが、個人的には、ラフマニノフのピアノソナタ第2番がとても印象に残りました。ピアニストの熱い想いが観客に伝わる演奏だったと感じます。

和声の進行がとても吟味されていて、端正な中にも朗々と歌い上げられ、真摯に作品に向き合うピアニストの強い想いを感じました。ピアノの演奏は、たとえ技術的に完璧でも、人の心に響く演奏になるとは限らないのが難しいところですが、終始、観客も集中して惹きつけられていたと思います。

アンコール1曲目のバルトークも、視線が遠くに行っているような伸びやかさを感じ、前半のバルトークとはまた違った面を感じました。大先輩のピアニストが謙虚な姿勢で精進していらっしゃるのを拝見すると、あぁ私ももっと精進したいなぁ....、精進しなきゃ....と元気を頂けた演奏会でした。

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2023年09月06日 13:32

ホームページについて

このたび、新しくホームページを開設いたしました。このホームページは、ピアノ教室についての記事のほか、演奏会に行った感想や音楽について、
音楽とも関わりの深い美術展の感想、映画の感想、読書などについて、自由に書き留めていきたいと思います。

音楽は、作曲家が作品を作る際の色々なイメージが、音符に書き留められています。自然の素晴らしい景色に出会った喜びが表現されていたり、ある本を読んでインスピレーションを受けたものから作品を書いたり、絵画と関わりがあったりします。

ピアノを演奏する場合も、楽譜を読んで弾けるようになってから、その先には、独自のイメージを持つことが大切です。
私自身も、ピアノを教える時も、自分が演奏する時も、様々なイメージを持って音楽に接しています。

そんなことを時々、自由に書き留められたらと思っております。
 
2023年09月04日 15:21

新しくホームページができました

9月1日より、練馬区上石神井で新規オープンするピアノ教室のホームページが公開となりました。今まで江戸川区で長くピアノ教室を
してきましたが、新たに練馬区上石神井でも開講することになり、防音室も工事予定です。
ピアノ教室自体は11月オープンですが、お問い合わせなどは受け付けております。
よろしくお願いいたします。
2023年09月04日 15:09

2023年11月オープン

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2023年11月に練馬区の石神井公園近く、練馬区上石神井3丁目にピアノ教室を新たにオープンいたします。

緑豊かな石神井公園の近くで、3歳の小さなお子様から趣味でピアノを楽しみたい大人の方、専門家の方まで、幅広い年齢層の方を対象としているピアノ教室です。

無料体験レッスンもございますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

2023年09月01日 10:00

おがさわらピアノ教室

【電話番号】 080-8132-4676

【住所】 〒177-0044
東京都練馬区上石神井3丁目

【営業時間】 <レッスン時間>13:00-20:30
<受付時間>11:00-21:00

【定休日】 不定休

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