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福田美術館 伊藤若冲の激レアな巻物

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年始に行った京都の最終日、以前から行きたかった福田美術館に立ち寄りました。この美術館は5年前にできたばかりで、嵐山の渡月橋が見渡せる位置に立地し、美術館のカフェからは非常に良い眺めです。開館5周年ということで、世界初公開の伊藤若冲の巻物など話題性もあった展示でしたが、なかなか素敵な美術館で面白かったです。伊藤若冲の水墨画も多く展示されており、筆のタッチの見事さに魅入ってしまいました。展示物の撮影は普段は禁止ですが、たまたまお正月だったせいか、全展示物が撮影可能の日でラッキー。若冲は独特のマニアックな観察力で描く動物が面白いですが、今回の目玉の巻物は、なんと野菜ばかり52種類も描いた「果蔬図巻(かそずかん)」という巻物でしたo(≧▽≦)o  しかしこの巻物が面白く、若冲の手にかかると野菜が生き物のようにも見えます。野菜をずらりと延々描くなんて、なんてマニアック!!しかもこれを描いたのは若冲75歳。若々しいというか、執着心や拘りが何とも凄い75歳です。この「果蔬図巻」は、ヨーロッパの個人の所蔵だったものが、日本に里帰りして福田美術館のコレクションに入ったそうです。美術館所蔵となると、また見られる機会もありそうで嬉しい( ´∀`)。他にも鯉が飛び出て来そうな水墨画や、お得意の鶏や鳳凰の絵もありましたが、ちょっと面白かったのが僧侶の托鉢を描いた絵でした。ぞろりと列を成して托鉢する僧侶たちの表情が、それぞれ異なり、和気あいあいと楽しそうです。

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若冲の他にも竹が描かれた屏風絵もあり、水墨画の一筆書きのほとばしる様な生命力が見事でした。鶴亭浄光(かくていじょこう)という知らない画家の絵でしたが、失敗のきかない墨のタッチのシュッとした伸びやかさ、大胆さに目を奪われます。

鶴亭浄光「梅・竹図押絵貼屏風」IMG_6283_コピー  

京都で素敵な美術館を見つけた喜びに浸りながら、夕暮れ時の渡月橋周辺を散歩して帰途に着きました。またいつか来館することになるでしょう。

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2025年01月08日 23:12

映画「海の沈黙」

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久しぶりに映画館に行き「海の沈黙」を鑑賞しました。昔からファンだった倉本聰さんが60年も温め続けた集大成の脚本、そして題材が芸術の話となると、劇場で観ない訳にはいきません。北海道が舞台の倉本さんの富良野ドラマ3部作「北の国から」「優しい時間」「風のガーデン」は大好きで何度も録画を見返していますが、今回の映画はそれを上回る渾身の作品かもしれません。「美」というものの価値、芸術の真の評価とは何か?、など中身のある題材がテーマですが、キャストが名優さん達ばかり、その魂のこもった演技に惹き込まれ、こういう映画を多くの人に見て欲しいなぁと切に感じました。美術を題材にした映画なので、さて一体どういう絵が登場するのだろう?と興味深々でしたが、出てきた絵に驚きました。凄みがあり、佐伯祐三を思い起こさせるような荒々しくザラッとした質感、一度見たら忘れない存在感です。高田啓介さんという画家の作品で、見る者をざわざわと揺さぶる厳しい絵でした。実際にあの絵を生で見てみたい......

映画のストーリーとしてはミステリータッチで、人の愛憎、嫉妬心などが美術界に絡んで描かれています。テーマである芸術の評価や価値は、美術だけでなく音楽その他、どの芸術にも共通してつきまとう話です。世間で話題になったり、コンクールで賞を沢山取ったからと言って、その人の表現が人の心を打つかというと、それはまた違う世界です。音楽の演奏会でも、技術的にはとても達者で文句なし、でもなぜか心に響いてこない......ということが良くあります。心の中から感じるものを、素直に感じるまま表現し、イマジネーションに富んでいる人の演奏は、有名人でなくても感動することもあります。画家や作曲家は何もない無から心の生き様を形にしますが、そこには、その人に取ってとても大事な人の存在が潜んでいたり、それが心の根源になり得ることもあります。それらが集約されたような映画作品でした。

倉本聰さんがこの脚本を書きたいと思われたきっかけが、鎌倉時代に作られて重要文化財に指定されていた古陶器の壺が、実は現代の陶芸家の作品だったと分かり、重文から外された、という話だそうです。昨日まで皆が美しい美しいと言っていたのに、時代が違うとわかった途端、評価が一変して価値が下がるのは変じゃないか?と......  ものの価値は、それぞれの人がそれぞれの感性でもって、あぁいいなぁ、これ素敵!と感じることに意味があり、そこに評価がついてくるものですが、悲しくもメディアの報道に振り回されることもしばしば見受けられます。

芸術の価値とは何なのか、真の美を見極めるとはどういうことなのか?、こういう中身の濃い本物の映画が日本アカデミー賞の最優秀作品賞を取って欲しいです。私自身も芸術に携わる人間として、自分の感性でものを感じ、真の美を理解できる人間でいたいものです。そうそう、映画を見ながら「このチェロいいなぁ.....」と思っていたら、間接的に知っていて何度か演奏を聞いたことのあるチェリストの奥泉貴圭さんでした。音楽は住友紀人さん。

倉本聰さんの書く脚本にはいつも色々考えさせられますが、録画した以前のドラマがまた見たくなりました。画質の良い「優しい時間」の再放送を長年待っているのですが...... このドラマで登場した窯元「皆空窯」には何度も足を運び、少しずつ食器を集めて日々使っています。


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2024年12月09日 11:15

「モネ 睡蓮のとき」展

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上野の西洋美術館で開催中の「モネ 睡蓮のとき」展を見に行きました。睡蓮やモネの庭にまつわる絵ばかりが一同に展示されるという特殊なテーマの美術展です。モネが自身で造ったフランスのジェヴェルニーの庭の睡蓮を描いた絵は数百点あり、その一部が展示されていました。モネは印象派のドビュッシーとも深い関係があり、私の大好きな画家の一人です。お気に入りの複製画も3点ほど持っていますが、個人的には睡蓮のモティーフより、違う風景の作品に惹かれます。ただ、今回の睡蓮の絵ばかりを展示した美術展はなかなか面白く、モネの制作過程も良くわかり、惹かれる絵もありました。睡蓮の絵は数百点も描かれているだけに、あぁすごくいい!と思う絵もあれば、う〜んこれはイマイチ、と思う絵もあるように思います。ただ、確実に言えるのは、モネの睡蓮に対する執着心の凄まじさで、視力が衰えてからも抽象画のように具象化された睡蓮の庭を描き続け、最後の方は異様な妖気さえ感じます。

睡蓮の絵は個人的にそれほど好みでないとは言え、昔一度だけ行ったことのあるフランスのオランジュリー美術館の楕円形の睡蓮の間は、感性を刺激される圧倒的な作品群で、あれを見ずにモネの睡蓮は語れないなぁと思います。その部屋に入った途端に身体の深奥にあるものを揺さぶられ、ツーと涙がこぼれてしまったのでした(T . T) ふと異次元の世界に連れて行かれ、天井からの柔らかい日差しの中で睡蓮の花がまるでその場に溢れ出すような感覚というのでしょうか。本物の睡蓮よりも迫力や妖気のようなものが匂ってくる感じです。今回のモネ展を見ながら、モネのジヴェルニーの庭には一度絶対行かなければ.....と再認識しました(笑)

今回のモネ展では、オランジュリー美術館の睡蓮の間に似せた部屋があり、色々なタイプの睡蓮の絵が点在する形で展示されています。これはこれで趣向を凝らしたもので、素敵な睡蓮の絵があり、写真を撮っても良い部屋だったので人で溢れかえっていました。時期的にテレビで色々と話題になってしまった直後で多くの人が写真を撮ったりと、あまり落ち着いて見れる環境ではなかったのがちょっと残念ですが、幸せな時間を過ごせました。複製画の1つにちょっと興味を惹かれましたが.......今回はお預けかな.... 余談ですが、山形美術館で見た吉野石膏コレクションのモネの「サンジェルマンの森の中で」複製画を、どこか日本の会社が作ってくれないかしらん?と長年心待ちにしています。以前、山形美術館でその絵に惹かれて買った複製画はあまり良い出来ではなく......(>人<;) 最近の技術開発された複製画が欲しい.....(^◇^;) あの絵にもう一度会いたいなぁ......山形はちょっと遠いのだけど....

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2024年11月26日 23:40

音楽・美術・文学・映画・自然の連結

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去年の秋、初めてブログを書き出してから1年近くになります。石神井公園の近くに新居ができた際、ピアノ教室のHPを立ち上げ、その紹介と共に始めたものですが、マイペースで自由に日頃の感じたもの、私の頭の中でつながって相互作用があるようなものを記事にしてきました。毎日のように音楽と密接に関わり、ピアノを教えたり、自身の練習をしていますが、音楽は、読譜力が備わり、指の練習だけを勉強しても豊かな世界が広がる訳ではなく、一見、関係のなさそうな美術や文学、自然、映像作品などと深い関連性を持っています。読譜力が備わり、指が思い通りに動くようになった先に、ようやくその豊かな世界が現れます。その領域に到達すると、楽譜の奥を読み解き、ピアノを弾きながら想像力が働くようになり、音楽とそれ以外のものがコラボレーションしていきます。そこがとても自由で楽しく、想像力や感性が広がる世界です。ピアノを習い始めたばかりの小さな生徒さんは少々時間がかかりますが、数年ピアノを続けていると、その領域に少しずつ入っていきます。教える側も、弾いている曲のこの部分はどんな気分かな?、どんな風景かな?、どんな色かな?と子供に尋ね、その反応が楽しいこともあります( ^ω^ )

少し専門的な話になりますが、ロマン派のシューマン、ショパンなど、文学からインスピレーションを受け、音がまるで物語を語るような作品も多々あります。シューマンは、E.T.A.ホフマンという作家の幻想小説に夢中になり、まるでその世界を音で体現させたような作品が多く、話がどんどん飛び、いろんな場面に切り替わる場面展開が、ホフマンの小説とも似ているようにも感じます。同い年のショパンも、ポーランドの詩人ミッケヴィッチの叙事詩からインスピレーションを受けたバラードなど、文学からの影響が見られます。恋人はジョルジュ・サンドですしね♪( ´θ`)音楽史で言う近代のドビュッシーになると、映像的なものを音で表現し始めます。ドビュッシーはエキゾティシムに憧れ、日本の浮世絵や骨董品に夢中になり、古寺にまつわる作品として版画の「塔(パゴダ)」などもあります。画家のモネとは「印象派」のグループで一緒に活動していました。また、音楽が宗教的なものと深く結びつく場合もあり、私の大好きなJ.S.バッハのマタイ受難曲や教会カンタータは、その部類です。因みに教会カンタータBWV182は、高校の時からの精神安定剤です(^。^)

芸術は、日常的に感性を刺激したものが頭の引き出しから飛び出てきて、それらが音や色、文などに反映され、結晶となって生み出されるものです。演奏の世界で言うと、ピアノを弾きながら、ある本の一場面が浮かんだり、絵が見えてきたり、映画のワンシーンが思い出されたり、旅で見た自然の風景や古寺の静けさ、感性を揺さぶられるもの全てが栄養となります。

ヘルマン・ヘッセが「ヘッセの読書術」という本で、芸術の「言葉」について書いています。「羨望の思いで詩人は、画家や音楽家のことを考える。画家は自分の言葉である色で語りかけることができるし、音楽家も、その音で全ての人間の言葉を語り、操ることができる。詩人は、音楽家を特に強く、うらやましく思う。音楽家は自分たちだけが使える言葉を持つからである。ところが詩人は、学校の授業や商売に使われて、電報を打ったり裁判したりする時に使われるのと同じ言葉を使って、自分の仕事をしなくてはならないのだ。自分だけの表現手段を持たないのはなんと貧しいことであろう!」

音楽は、音を通して人間のあらゆる気分、愛情表現、官能性まで抽象的な言葉で語ります。大学生の時、ヘッセにハマったことがあり、「知と愛(副題 ナルチスとゴルとムント」は愛読書となりました。芸術に向いている人間と精神性を極める人間とが出会い、のちにそれぞれの道を歩む話ですが、この作品の本当の意味がわかったのは、数年後でした。ベートーヴェンの作品109を弾いていた時期、ある日のある瞬間、ヘッセの文学的本質と音楽の本質が結びつく現象が起きました。確かこういう現象を共通感覚と言ったかしらん?今思い出すと懐かしいばかりですが、あの頃の感性を保ちつつこの先も芸術に触れて行きたいなぁと思います♪(´ε` )
                       
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2024年09月19日 00:10

神護寺・特別展

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国立博物館で開催されている「神護寺」展に行ってきました。普段はご開帳されない貴重なものばかりで圧倒される美術展でした。空海が唐から持ち帰った真言密教がどのように日本で広められていったのか?、その原点がわかりやすく解説され、重みのあるご本尊の仏像や曼荼羅に思わず見入ってしまいました。よくこれだけの秘仏や国宝が並べられたなぁΣ('◉⌓◉’)と驚くばかりです。一番初めに弘法大師像の板のレリーフがあり、とても趣きがあリましたが、両界曼荼羅(高尾曼荼羅)に非常に圧倒されました。弘法大師・空海が唐で学んだ密教の内容が4メートル四方の紺の布地に金泥と銀泥で描かれたもので、仏の世界が体現されています。大日如来を中心に、周りに4百数十体の仏様達が、気の遠くなるような精密さで描かれ、大変美しいと同時に何か吸い込まれるような気配があります。4メートルの高さの曼荼羅ともなると大きすぎて、下から仰ぎ見ても詳細が見えません。それを補うために開設されていた8Kの拡大映像や解説が非常にわかりやすかったです。曼荼羅が途方もない労力を尽くして作られたものかを思い知りました。大日如来というと、私の頭に浮かぶのは京都の東寺の立体曼荼羅、奈良の円成寺の大日如来像(若かりし運慶の二十代の作品)ですが、この曼荼羅に描かれた大日如来は、果てしない宇宙の大きさを感じさせます。

後半には、神護寺のご本尊の国宝・薬師如来立像もありましたが、こちらはそのお顔の厳しさに驚きました。奈良の古寺が大好きで今まで多くの仏像を見て来ましたが、薬師如来像というと薬師寺や新薬師寺の穏やかな表情の仏像が頭に浮かびます。神護寺の薬師如来像は、それとは全く違って険しい表情をしておられますが、一度見たら忘れない仏像でした。他にも国宝の虚空蔵菩薩像が五体、面白いポーズを取っている十二神将の展示など、堪能しました。

真言密教など宗教の詳しい知識はありませんが、日本人の原点の心象風景を見た気がします。毎年のように行っている奈良や京都の仏像にまた会いに行きたくなりました(*´◒`*)


                          


            
                 
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2024年08月30日 11:27

戸隠神社

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長野県の戸隠神社に参拝してきました。戸隠神社は5社ありますが、その一番奥にある奥社の参道を進むと隋神門、奥へと続く杉並木がとてもスピリチュアルです(^。^) 高くそびえ立つ杉たちは涼やかで緑を満喫でき、手を触れるとエネルギーをもらえる気がします。太い太い杉に耳をつけると、微かに水の音が聞こえるような......(・・?)  隋神門に行く途中にある苔むした小さな祠は、ジブリの「千と千尋の神隠し」の冒頭に登場する祠を思い出しました。隋神門の屋根には無数の草が伸びており、歴史や神話を感じます。奥社まで続く2キロの杉並木の参道は意外に長いですが、木々に囲まれているため日差しが柔らかく、夏の暑さもあまり気になりません。圧倒されるような緑に囲まれた中にあり、神社の周辺には池や散策路なども多く、信州名物の蕎麦屋さんも沢山あって、1日では到底廻り切れませんでした。またいつか来ようかな?


 苔むした祠 IMG_5902_コピー   
隋神門 IMG_5904_コピー

もう一つ、小布施にある「岩松院」を訪ねました。晩年の葛飾北斎が4回も東京から訪れた場所で、交流のあった高井鴻山に呼ばれ、その援助で描いた大きな天井画があります。板に描かれた20畳の大きさの鳳凰の絵は迫力でしたが、北斎がこれを描いたのが88~89歳とのこと、仰天です(^◇^;) 東京から片道240キロもある小布施まで、83歳以降に歩いて4回も来たとのこと、北斎の体力もさることながら、なんとも凄まじい生命力ですね。北斎先生、さすが.....!! この岩松院は戦国時代の武将、福島正則の菩提寺でもあると初めて知りました。49万石だった広島から、徳川幕府に睨まれて4万5千石の信越地方に国替えさせられた福島正則の霊廟がありました。また、小林一茶の「やせ蛙 負けるな一茶 是にあり」と詠んだ俳句の蛙池があり、この俳句の本当の意味をお寺の方に教えて頂き、なかなか面白かったです。


岩松院ご朱印 IMG_5927_コピー

                          


            
                 
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2024年08月17日 11:02

「出光佐三、美の交感」展

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出光美術館で開催されている「出光佐三、美の交感(波山・放庵・ルオー)」展に行ってきました。出光美術館の初代館長の出光佐三さんが、同時代の3人の作家たちと関わった軌跡をもとに企画された美術展です。陶芸家の板谷波山のやきもの、小杉放庵とルオーの絵画の3種類の作品で構成されており、とても楽しめました。

2年ほど前、板谷波山という陶芸家のやきもの展が、しもだて美術館、廣澤美術館などで開催されている情報を知り、車を飛ばして見に行った事がありました。その時初めて見た板谷波山の美しい焼きものの驚きと感動は、今でも強く印象に残っています。板谷波山の生涯を描いた映画「HAZAN」も廣澤シティで同時に上映されており、この映画も印象的でした。波山の焼きものに対する一途で厳しい姿勢は、長年の極貧生活の中でも揺るがず、ようやく奇跡のような陶芸作品が生まれたその行程は、想像を絶する世界です。映画の終わりで、波山の陶芸の真髄を認めて高く評価し、これから先、作品を買い取るというスポンサーが登場しますが、その人物が出光佐三さんだったのだ、と繋がりました。あの映画をもう一度見れないかしらん?

今回の出光美術館では、波山の小ぶりな作品が多く、個人的に好きな作品がたくさんありました。掌にすっぽりと入ってしまうような美しい香炉や花瓶、一輪挿しは独特の世界観があり、惹き込まれてしまいます。中でも、出光佐三さんが初めて見て感動した「葆光彩磁葡萄文香炉」、「葆光彩磁花卉文花瓶」→漢字が難しい!(ほこうさいじはなくさもん)と読むのかな?(>人<;)、「葆光彩磁紅禽唐草小花瓶」(掌に乗る一輪挿しの小さな花瓶)が素敵でした。波山の「葆光彩磁(ほこうさいじ)」というのは、白地で光沢がなく、ヴェールをかけたような感じで、でも涼やかでしっとりしており、何とも言えない幽玄さがあります。やきものについては全く知識がありませんが、一目見て、とてつもない時間と行程をかけて、奇跡のような瞬間に生まれる焼きものなのだろう......φ( ̄ー ̄ )と想像がつく感じです。私の好きなロイヤルコペンハーゲン、エミール・ガレなどにも影響を受けたようだとの解説がありました。

小杉放庵は、どの作品にもおおらかさを感じます。風景の中に小さく描かれた人物は愛嬌があり、思わず心が緩みます♪(´ε` )。油彩画と日本画で自身の理想像を追求した画家のようですが、個人的には水墨画がお気に入りとなりました。ルオーは、ステンドグラスの職人だったこともあり、窓枠の中にハマっているように感じる宗教画でした。どれも独特の色使いやタッチで面白いのですが、宗教画ということもあり、ルオーばかりダーッと沢山並んでいたら、キリスト教徒でない私には少し息苦しいかも.....?

3人の作家の作品が、心地良い配置で展示されていましたが、こういう配置って、どうやって決めていくのでしょうね...?以前、「ぶらぶら美術館」という美術番組があり、肩肘を張らない、美術展の裏側なども垣間見えるお気に入りの番組だったのですが、なぜか突然、打ち切りとなってしまいました。10年も続いていたのに......  また復活してくれないかしらん♪( ´θ`)



                          


            
                 
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2024年06月28日 23:35

雪舟伝説展

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京都の国立博物館で開催されている「雪舟伝説展」を見に行ってきました。雪舟の絵は、以前から一度しっかり見てみたいと思いつつも機会がなく、ようやくお目にかかれましたが、一目見たら忘れられない強烈なインパクトを受け、衝撃的でした。非常に見応えのある美術展で、京都まで行って良かった)^o^( 〜。この美術展は巡回がなく京都でしか見られないのでした。雪舟はなんと6点もの絵が国宝に指定されている日本画家の祖とも言える画家ですが、その国宝全てがこの展覧会に集結しており、生の絵からしか感じ取れない凄み、強靭な世界を満喫できる秀逸展でした。後の日本画家たちがこぞって模写したのが頷ける水墨画は、墨だけでこれほど強い絵が描けるものなのか......と、絵を前にしても驚くばかりです。

以前、京都の智積院で、田淵俊夫画伯の描いたなんとも美しい水墨画に感動したことがありました。桜を描いた田淵画伯の水墨画は、墨なのにほんのり桜色を感じる本当に美しいもので、もう一度見に行きたいと思いますが、雪洲の水墨画はそれとは全く逆の強烈さ、アクの強さがあります。特に国宝の「天橋立図」「四季花鳥図屏風」では釘付けになり、見たままではなく画像を組み合わせ構成する独特の世界観に惹き込まれました。また、中国の画家の画風を真似て描いた連作は、全く異なる画風なのに雪舟の絵になっており、僕はどうにでも描けるんだよ....と言わんばかりの感性の柔軟さに驚きました。この展覧会は、雪舟だけでなく、狩野探幽、曾我蕭白、長谷川等伯など、雪舟を尊敬して学んだ画家達の水墨画も数多く展示され、このレベルの展覧会には、なかなかお目にかかれないだろうと感じます。家の本棚は埋まっているのに、ついまた雪舟展の画集を買ってしまいましたΣ(-᷅_-᷄๑)

雪舟は「画聖」と呼ばれて尊敬されましたが、音楽にも「音楽の父」や「楽聖」と呼ばれる作曲家が存在し、芸術の世界は似ているなぁと感じます。「音楽の父」はJ.S.バッハ、「楽聖」と呼ばれるのはベートーヴェンですが、シューベルト、シューマン、ブラームス、ブラームスなど、多くの作曲家が研究し、学びました。ただ、音楽でも美術でも、「祖」となる芸術家は何もないところから独りで生み出した訳で、一体どれほどのエネルギーの強さや想像力の豊かさを持っていたのだろうか.....?と驚嘆するばかりです。

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2024年05月05日 13:05

芝木好子「光琳の櫛」

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芝木好子さんという女流作家の小説が好きで、数年ごとに幾度も繰り返し読んでいる本があります。芝木好子さんは、芸術に携わる人を描いた作品が非常に多く、日本の伝統美の世界を担っている職人さん、日本画家、華道家、陶芸家、染色家、芸術的なものをこよなく愛するコレクターなどをモデルにした、いわば芸術オタク気質の作家さんです。少し前の世代の作家さんのせいか、今は本屋さんの店頭に並んでおらず、古本屋さんでしか売っていない本も多いのが寂しいところです。ただ最近、昔の本も電子化されつつある時代なので、電子化してくれないかしらん?と熱望しています♪(´ε` )

江戸時代の文化で広がった女性の櫛は、当時、芸術的な作品も多数作られました。「光琳の櫛」という小説は、尾形光琳の櫛に出会うまでの櫛コレクターの女性が主人公ですが、この小説から色々な江戸時代の文化に触れることができ、源氏物語、伊勢物語、あるいは尾形光琳、原羊遊斎(蒔絵師)の世界が垣間見え、なかなか楽しいです。

20年以上前でしょうか、たまたま職場の交流会で行った奥多摩の「櫛かんざし美術館」で、この小説に描かれている櫛たちが展示されているのを見て非常にびっくりした('◉⌓◉’)、という体験をしました。小説に登場する芸術的な櫛たちが実際に目の前に現れたのですから、何だか狐につままれたような心地がしたのを覚えていますϵ( 'Θ' )϶

それ以後、櫛かんざし美術館のカタログを横に置き、「光琳の櫛」を読み進めながら、小説で描写されている櫛の写真をカタログから探し出し、「あ〜これだこれだ......」とリアルに小説を体験する遊びをするのが、数年ごとの癖になっています(^。^)  なかなかこんな事ができる小説は他にありません。蝶のコレクターの「黄色い皇帝」という小説でも、この遊びを実施するべく、世界の蝶🦋のカタログを片手に、この描写の蝶はどれかしらん?などと探して読みながら、その蝶が空に舞う姿を空想しています(^ー^)

小説に描かれた世界を体験する、映画のロケ地を巡る、これらは演奏とも似ている気がします。楽譜の奥に描かれた世界を想像して表現するのが演奏ですが、リアルに感じられてこそ、より自分の世界を体現するものになリますね.......



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2024年04月04日 11:02

中尊寺展

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上野の国立博物館で開催されている中尊寺展に行ってきました。時代劇や歴史好きなので、以前から中尊寺周辺に行きたいと思いながらも機会がなく、仏像だけでも見たいと思って出かけました。国立博物館の一室での小さな展示会でしたが、国宝の仏像群が美しく、作られた当時のままのお姿のようでした。奈良の古寺のような大きな仏像ではなく、意外に小ぶりの仏像で驚きましたが、端正なお顔、気品のある作りが印象的です。作られた当時は金箔が施されていた仏像でも、唐招提寺にしても薬師寺にしても、ほとんど金箔は剥げてしまっていますが、中尊寺の仏像は非常に美しかったです。この仏像を毎日眺めて拝んだであろう藤原家の方々から、大事に大事に守られて鎌倉時代から受け継がれてきたのだと実感しました。

私が古寺や仏像に興味を持ったのは、ある不思議な出来事でした。ある曲を聴いていた時、ふと目の前に、漆黒の闇の中に仏像が点々と浮かび上がり、まるで立体曼荼羅を見ているような錯覚を覚え、それがきっかけで実物の立体曼荼羅を見たくなってしまい、京都の東寺に出かけたのでした。

東寺の立体曼荼羅を見た後、他のお寺や仏像にも興味が湧き、古寺巡りをするようになりました。仏教には詳しくないのですが、古寺で仏像と対峙すると心がリセットされ、自分を見つめるような静かな時間になります。それが心地よく、京都や奈良へ毎年のように出かけています。

この仏像のお顔は良いなぁ、好きだなぁと思うものは無数にありますが、室生寺のご開帳で見た十一面観音菩薩像、秋篠寺の伎芸天像は、ほんのり色気を感じ♪( ´▽`)、今にも動き出しそうな芸術性を感じます。興福寺のご開帳で見た南円堂の木造不空羂索観音菩薩坐像、北円堂の木造弥勒如来坐像は、ド迫力で圧倒されますが、まだまだ修行のできていない私には、その悟りの世界にはとても入っていけそうもない近寄りがたさを感じます(>人<;)  唐招提寺の千手観音や、東大寺の大仏様は、その大きさゆえ、包み込まれるような安心感を覚えます。金峰山寺の金剛蔵王大権現は、過去、現在、未来を表した3体の怖いお顔の像ですが、我が身の修行の足りなさを叱りながらも受け入れてくれるように感じますm(_ _)m

仏像は秘宝ゆえに、ご開帳時にピンポイントで行かないと見られないものもありますが、たまにお会いするだけでちょっと幸せになります。現代人の私ですらそうなのだから、昔の人はさぞ癒されたことでしょう。

                          


            
                 
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2024年03月18日 00:02

おがさわらピアノ教室

【電話番号】 080-8132-4676

【住所】 〒177-0044
東京都練馬区上石神井3丁目

【営業時間】 <レッスン時間>13:00-20:30
<受付時間>11:00-21:00

【定休日】 不定休

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