おがさわらピアノ教室|東京都練馬区

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ユトリロ展

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新宿の損保ジャパン美術館で開催されているユトリロ展を見に行きました。ユトリロの描くパリの街や建物は独特の陰鬱さがありますが、同時にとても惹かれます。人をほとんど描かないのに、なぜか建物の中にいる人を想像してしまう、生きた建物というのでしょうか、人の気配があります。ユトリロの絵ばかり、これほどの数を見たのは初めてでしたが、子供の頃からアルコール依存症で幾度となく入退院を繰り返し、苦しい青春時代を送った孤独感がじんわり絵に滲み出ていて、魅力的なのだけれど、ざらりとするものがあります。展覧会で後ろの方に展示された絵は、結婚して幸せ感が出てきますが、苦しい時代に描かれた絵の方に魅力を感じるのは皮肉なものです。

最近の美術展は、スマホで写メを撮って良いものも増え、今回のユトリロ展も殆どの絵が撮影可能でした。絵を見ながら歩く時間は至福の時ですが、自分の心に照らし合わせて、どの絵を
撮って帰ろうかな?と撮影ポイントを探すのも最近のスマホ対応の美術展ならではかもしれません。この日の一番のお気に入りは「ラパン・アジル」、次がちょっと地味目の「サン=ピエール広場から眺めたパリ」

「サン=ピエール広場から眺めたパリ」IMG_0518_コピー

斬新でインパクトのある「マルカデ通り」IMG_0523_コピー



ちょっと怖かった絵が「サン=ディディエの教会、ネイロン」IMG_0530_コピー
この教会はゾゾゾっとします。見ていると吸い込まれそう。一度見たら忘れない感じの絵ですね。

晩年の幸せな時代に描かれた「ボワリエール・エコールの教会と通り」は、とても美しい絵なのだけれど、綺麗すぎてユトリロ独特の魅力が少し薄いような.....

「ボワリエール・エコールの教会と通り」IMG_0534_コピー
 なんて随分勝手なことを一人で考えながら絵に浸った幸せな時間でした。



    


                          


            
                 
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2025年11月05日 22:05

田代慎之介ピアノリサイタルを聴いて

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上野の東京文化会館小ホールで開催された「田代慎之介ピアノリサイタル」を聴いてきました。今回のプログラムは何とリストの超絶技巧練習曲を全曲!!今まで数々の演奏会に行きましたが、リストの超絶技巧練習曲を全て聴くリサイタルは初めてです。演奏会までの練習過程を想像するだけでなんて恐ろしい.....Σ('◉⌓◉’) プログラム冒頭はモーツァルトの短調のロンド、これはスーッと心地よく胸に響く前菜。その後、リストの超絶技巧が12曲、休憩を挟んで演奏されました。よくありがちなリストの演奏は、名人芸的ピアニズムが「これでもかぁ〜」と全面に出て、時に強過ぎるエネルギーがギラギラとキツく感じられる場合もあるのですが、昨夜の演奏会では全くそんなことは無く、ずうっと聴いていられるリストでした。何と言っても「超絶技巧」ですからピアノの最高峰のメカニックを駆使した難曲ばかり。全曲通すだけでもゾッとしますが、その中で今回の演奏会は、リサイタルを通して何か一貫した信念があるように感じました。

リストはスーパースター的ピアニストの華やかな面が有名ですが、哲学的、宗教的な面や深い思索もあります。昨夜の演奏会では、超絶技巧の作品ながらもリストのそういったコアの部分を壮大な歌に仕上げようとしていたように感じました。以前、ゴーギャンの<我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか>という絵が日本に来た時、見に行った会場で動けなくなるような、何かを突きつけられるような衝撃がありましたが、その絵を見ていた時にふと、リストのロ短調ソナタや「ダンテを読んで」とリンクするような錯覚があったのを思い出します。人間の人生とは何か?を問う姿勢のような...... 私の大好きなミレーの「羊飼いの少女」と言う絵も、少女と広い草原と羊たちを描いているのに、その絵の向こうに神への敬虔な祈りや感謝の心を感じます。一本貫く信念のようなものが根底にあると、それが演奏や作品を通して滲み出てくると言うことなのかもしれません。

リストのロ短調ソナタは憧れですが、私の小さな手では到底無理な話で......(T ^ T) だってリストは小指がなんと8センチ!!私の中指より長い!とんでもない指の長さですo(`ω´ )o 顔が超イケメンなのは知っていますが、きっと手足も長かったんでしょう。万博で見た足が1メートル以上あるチェコスロバキア館のお兄さんみたいに....

昨夜のコンサート、個人的には後半の8番〜12番がとても印象に残りました。8番「死霊の狩り」では独特の世界観に浸り、9番「回想」は繊細な美しさに魅了され、10番は非常に完成度が高くて壮大なスケールの歌に聴こえ、11番、12番は癒され...... 演奏会前、冷房の効きすぎた場所にいたせいか、気圧のせいか、軽い頭痛がしていたのに、なぜか演奏会が終わったら治っていました。音楽に惹き込まれて癒されたからかしらん?♪(´ε` )


                          
            プログラム IMG_0116_コピー

            
                 
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2025年09月04日 11:05

万博から得る豊かな世界

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今年の夏は猛暑どころか酷暑となっていますが、万博熱は高まっているようですね。かく言う私も万博の面白さにすっかりハマってしまい......思えば1889年のパリ万博でドビュッシーが東洋の楽器や美術品に衝撃を受け、夢中になってしまったエキゾティシズムからドビュッシーの名曲がたくさん生まれた訳ですが、ちょっとその気持ちがわかったかも?今回の万博は音楽と映像が一体になったものが多く、視覚からも聴覚からも刺激をたくさん受けます。

万博会場の海に面したウォータープラザで毎日開催されている噴水ショーでは、数十メートルの幅で水が相当な高さまで噴き出て、壮大な音楽に合わせて右へ左へと踊り回り、音楽を水で表現していました。リストの作曲の源となった「エステ荘の噴水」の噴水はどんなだったかしらん?と想像しながら、爽快な気分に......
ベトナム館では、3人の奏者による民族音楽の実演があり、名前も知らない楽器の音が新鮮でした。琵琶に似たもの、太鼓、もう1つは竹でできた楽器です。ヨルダン館では、ヨルダンから運ばれてきたサラっサラの砂場に裸足で入り、360度ぐるりと張り巡らされた砂漠の夜空を見ました。非常に美しかったです。夜の砂漠というと、生徒のレッスンで教えているカバレフスキーのソナチネ第1番の第1楽章の第2主題や第2楽章は、なぜか目の前に夜の砂漠の景色が浮かびます。正にその世界..... ヨルダン館の2階では天然石を使ってコースターを作るコーナーがあり、記念に作ってみました。アイルランド館では来場者が触れられる小さめのハープがあり、ハープに初めて触り..... 意外に柔らかい弦の感触でした。

  ベトナム館民族音楽 IMG_9028_コピー       
 ヨルダン館で作ったコースターIMG_0118_コピー

ウズベキスタン館ではサマルカンドブルーの建物の映像が美しく、ネパール館では曼荼羅を細工した彫刻に目を見張り、ペルー館ではナスカの地上絵の研究を山形大学が行なっていることに驚き.....ナスカの地上絵ってなんと893点もあるんですね!! トルクメニスタンなんてどこにあるかも知らなかった国の展示も面白く...... トルクメニスタン料理、レストランが行列で入れませんでしたが、食べてみたかったなぁ.....ʅ(◞‿◟)ʃ カタールやオマーン、サウジアラビアなどのアラブ系の国は、おもてなしの心が伝わってくるパビリオンでした。砂漠の国に共通した感覚のような気がします。   
              ウズベキスタン館映像 IMG_8980_コピー
                  
イタリア館は芸術を前面に出した展示で、共同開催でバチカンから持ってきたカラバッジョの名画、古代ローマ時代の彫刻「ファルネーゼのアトラス」、ミケランジェロの彫刻「キリストの復活」に暫く魅入ってしまいました。「ファルネーゼのアトラス」のような名品は、なかなか美術展でも日本に来ないので、さすが芸術大国は凄いものを持ってくるなぁという感じです。腕の血管まで詳細に彫られていました。絵と違って彫刻は非常に重いので、なかなか日本まで来てくれないんですよね..... 酷暑で行列だらけの万博、朝から晩までの滞在は疲れますが、知的好奇心を満たすには余りある世界でした。

  イタリア館「ファルネーゼのアトラス」IMG_7383_コピー_コピー_コピー




            
                 
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2025年08月05日 11:05

北海道ガーデン巡り

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以前から行きたかった北海道のガーデン街道巡りをしてきました。北海道と言えども夏はやはり暑いんですね、帯広はなんと36℃!! 帯広〜旭川方面にガーデンが点在し、車で移動しながら7つのガーデンを散歩。お菓子の六花亭が経営する六花の森と中札内美術村や、十勝ヒルズ、真鍋庭園、柴竹ガーデン、十勝千年の森、そして富良野のファーム富田です。六花の森では青い空と小高い丘のコントラスト、美しい白樺のトンネルがとても印象的でした。丘の上にドーンと置かれたロダンの「考える人」に似た丸っこい石像が、妙に風景にマッチしてクスッと笑えます。

    六花の森 IMG_6946_コピー  IMG_6923_コピー
少し離れたところに、同じく六花亭の経営する中札内美術村があり、小さな美術館7軒を歩いて回ります。静かで人気も少なく、絵もなかなか見応えがありました。個人的には百瀬智宏さんの絵に一番惹かれ、最初は写真かと見まごうほどでした。北海道の風景の描写が本当に美しく、絵を見ていると木の葉が川に舞い落ちる音や、雪のサクサクした音が聞こえて来そうです。東大寺の襖絵を手がけた小泉淳作画伯の絵も印象的でした。襖絵の題材にもなったハスの絵は、ちょっと狂気を感じるほど。帯広駅に程近い真鍋庭園は、大きな森を切り取った感じの庭園で、木陰がたくさんあって癒されます。大きな樹木がこんなにあるガーデンもあるのだと驚きながら散策していくと、日本庭園だったりヨーロッパ風庭園だったりと景色が映り変わります。ドーンと広い丘も気持ちいいですが、木々に囲まれているとエナジーを感じます。

真鍋庭園 IMG_6999_コピー

十勝千年の森は、あまりに広大でビックリΣ('◉⌓◉’) 山まであって、この暑さでなければ登ってみたいですが、今回は平地のみに.....( ◠‿◠ )青い空と草原と山が広がる光景を、大きな木の下に座ってのんびり眺める時間は至福です。ものすごい数の蝶が飛び回り、東京では見たこともない黒地にロイヤルブルー模様のアゲハ蝶も見かけました。なんていう蝶かしらん?ただ、蝶の写真を撮るのは至難の業で、止まっていても近づくと飛んでいってしまうし、飛んでいると焦点を絞れないし......悪戦苦闘の末、諦めました(笑)木々にガラスの風鈴が無数に掛けてある「涼を呼ぶ庭」という庭があり、カラカラと鳴る涼やかな音色がなんとも心地良く......広すぎて全部回りきれないほどでしたが、ここはまたいつか来てみたい.....

       十勝千年の森 IMG_7067_コピー   IMG_8118_コピー

富良野に移動して最後に立ち寄ったのは、ラベンダーで有名なファーム冨田です。6月下旬〜7月末にラベンダーの紫一色に染まる農園で、全国からこの時期めがけて観光客が集まります。美しい紫の畑の周りを散歩していると、ラベンダーの香りが風に乗って漂ってきます。お土産屋さんもラベンダー尽くし.....紫色のものばかりが並ぶお土産屋さんは、全国でもここだけじゃないでしょうか.....( ´∀`)

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帰りがけに、富良野に行くといつも立ち寄るニングルテラスというお土産屋さんで木彫りの人形を1つ買いました。「森の楽団」シリーズで、それぞれ楽器を手にしています。行く度に1つずつ集めていて、またレッスン室に1人増えました。そろそろケースがいっぱいかも.....?北海道は何度行っても良いですが、次はいつかしらん?

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2025年07月18日 11:05

ル・カインの額絵&さくらももこ「憧れのまほうつかい」

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楽しみに待っていた絵が美術館から届きました。先月行ったエロール・ル・カイン展で購入した「いばらひめ」の額絵です。2ヶ月ほどかかる予定だったのが随分早く届き、嬉しくてすぐレッスン室に飾ってみました。ル・カインの絵本は既にコレクションしていますが、原画は絵本より深みがあり、丹精込めて描いた心の息吹が感じられます。数十年前、この絵本に出会った時の感動は現在も変わらず続いており、何度見ても癒されます♪( ´θ`)特にお気に入りなのは「いばらひめ」「おどル12人のおひめさま」「キューピッドとプシケー」。「シンデレラ」の挿絵もとても素敵で、馬車でお城に向かう場面など、河に映って馬車が逆さまになっているアイデアが素晴らしい!!

ル・カインの挿絵はどれも美しいですが、この「いばらひめ」の1枚はとりわけイメージに満ちて雰囲気抜群!!ル・カインは東洋風、中国風、日本風、アメリカ風、中東アラビア風など、本の中身に応じて全く違うイメージの絵を描く挿絵画家ですが、この絵はヨーロッパのクラシカルな感じです。「眠りの森の美女」と内容は同じで、王女の誕生を祝うパーティーに招かれた仙女たち一行が、夜の森を抜けてお城に向かう一場面です。この12人の仙女たち、とっても素敵な衣装に身を包み、ユニコーンの背に乗ったり、鳥に乗っていたり、自身の翼で飛んでいたり、籠に乗っている二人を3人が運んでいたり、孔雀に乗っていたり..... よくもまぁこんな想像力豊かな空間が浮かんでくるなぁと魅入ってしまいます。パーティーに招かれなかった仙女が恨めしげに木陰から覗いていたり..... 御伽話の絵本と言えども侮るべからず!見る人がその世界に入り込んで想像力を膨らませることのできる芸術性の高い作品で、こんなに夢中になったり童心に帰れるものは幾つになっても大事にしたいものです。

エロール・ル・カイン展では、私と同じくこの画家に夢中になった「さくらももこ」さんが執筆した「憧れのまほうつかい」も展示してありました。「ちびまる子ちゃん」で有名な漫画家さんですね。この本は、若かりし頃のさくらももこさんがエロール・ル・カインの本に出会って夢中になり本を買い集め、原画の蒐集家と出会い、ル・カインの絵をもっと普及させるべく、その軌跡を追って渡英したりと、とてつもないル・カインへの情熱愛を極めた体験談の本で大変面白かったです。こんなにル・カインの絵に惚れ込む人がいたんだわぁ( ´∀`)と嬉しくなりました。ももこさん独特の小気味よい文体で面白おかしく語るイギリスでの体験談は、ひと息に読めてしまいます。爆笑シーンもあり.....)^o^(  ただ、命を削って絵の仕事に打ち込むル・カインの妻が芸術に何の理解もない女性だったと知って悲しくもなり..... 芸術家の妻たる者、その芸術の価値を一番理解して応援する存在となるべし!o(`ω´ )o エロール・ル・カインの絵本が日本で知られるようになったのは、実はさくらももこさんのお陰もあったと知り、ももこさんにも個人的親近感を覚えてしまいました。日本未発売のル・カインの「グランマ」、英語版でもいいので近々出版してほしい.... ♪(´ε` ) 
            
                 
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2025年06月25日 11:45

「藤田嗣治」展

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新宿のSONPO美術館で開催されている「藤田嗣治」展に行きました。数ある展示の中で人物画が圧倒的に多く、自画像をこんなに描く画家がいるのだと驚きましたが、そのデッサンの上手さにビックリ!人の身体の柔らかさを線ひとつでこんなに描けるものかと思ってしまいます。個人的には人物画よりも風景画の方に惹かれるせいか、一番気に入った絵は「ヴォジラール、パリ」という作品でした。建物の巧みさに驚嘆するばかりでなく、1階の出入り口からひょいと人が出てくる気配、年数の経った建物で人が生活している様子が想像でき、その地域の雰囲気が漂ってきます。人物画が圧倒的に多い画家ですが、風景画をもっと見てみたいなぁ.....♪( ´θ`)ノ人物画は乳白色のような色がベースとなり、この何とも言えないほのかな乳色が印象的でした。モディリアー二とも親交があったようで、「あれ?これはモディリアーニの人物画に似ている?」と思わせる作品もありました。 

SONPO美術館には、特別に場所が設置されて鎮座ているゴッホの「ひまわり」があります。この日もお目にかかることができました。ただ......ゴッホのひまわりは、個人的にはちょっと....(^.^) 今まで何度も見ていて、見る度にすごいなぁと存在感と迫力に圧倒され、決して嫌いではないのですけれども.....「ひまわり」の圧が強すぎて、美術館で椅子に座って観るのなら安心して見れますが、例えレプリカだったとしても家に飾ったら気持ちが落ち着けない気がします。まるで見られているような......ゴッホの絵は以前、運動靴を描いた作品で、その靴が絵から飛び出て歩き出してくるようなゾッとするリアル感を感じたこともありましたが、異常にこちらに出てきます。パリの夜のカフェを描いた絵などは好きですが、「ひまわり」はその存在感が強烈なんですもの......('◉⌓◉’) 凄いなぁと尊敬するけれど、隣にいるのは無理....って感じかしらん。でもSONPO美術館の次の展示が秋のユトリロ展なので、また近々会うことになるでしょう。


            
                 
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2025年06月17日 23:12

イメージの魔術師エロール・ル・カインの世界

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子供の頃、趣味で絵を描く母が「ステキな本があったよ!」と見つけてきた本に魅入られたことがありました。エロール・ル・カインという挿絵画家の描いた絵本です。大人になってから偶然その絵本に再会し、日本語で出版されている本を少しずつ集めて20冊余りになります。イメージの魔術師と言われる「エロール・ル・カイン」は1989年に若くして亡くなった挿絵画家ですが、イギリスを代表する絵本作家として現在でも高い評価を受けています。絵本の挿絵と言っても非常に芸術性の高いもので、描かれた人物、模様、風景を見ているとその世界に惹き込まれ、想像が広がります。先日、八王子夢美術館で「エロール・ル・カイン展」が開催されているのを知り、出かけてきました。挿絵の原画、スケッチなどが展示されていましたが、絵本とは違う奥行きや深みがあり、ステキなひとときを過ごしました。量販される本の紙質はテカるものが多い為、絵の具の陰影まではなかなか全て出しきれない部分もあるようです。日本では出版されていない本の挿絵も多数あり.......あの本買えないかしらん?☆*:.(≧▽≦)..:*☆

エロール・ル・カインの絵は、物語の内容によって全く違うタッチに変幻自在で、一人の画家がこんなにも変身するのかと驚かされるばかりです。ギリシャ神話の「キューピッドとプシュケー」などは挿絵が全てモノクロ。でもギリシャ神話のように内容の深い物語には、白黒だけの世界が非常に似合います。お姫様ストーリーの「シンデレラ」は、シンデレラのドレスの模様が芸術的すぎて格調高い作品になり、一般的に連想されるストーリーとはかけ離れてしまう程です。他にも「ハーメルンの笛吹き」などはブリューゲルのような感じになり、インドを舞台にした物語ではアラブ系の絵に、東洋のお話はエキゾチックに変身します。私の一番のお気に入りは「いばらひめ」で、この絵を見るとラヴェルの音楽が浮かびます。内容は「眠りの森の美女」なので、チャイコフスキーのバレエ音楽が浮かんできそうなものですが、なぜかラヴェルの世界観に思えてなりません。

音楽と絵と物語は密接な関係があり、音楽を聴いて絵が浮かぶこともあれば、絵を見て音楽が浮かぶこともあり、音楽は常に何かしら物語を語っています。何年か前、レッスンしていた子供の生徒さんが雪の情景の曲を弾いている時、ルカインの「雪の女王」の挿絵を見せたらイメージが繋がって表情がとても豊かになったことがありました。正に百聞は一件にしかず、ですね。雪がもうもうと降る中をソリで果敢に進むような場面の曲、子供が雪景色を見上げている様子を描いた曲。作曲家の頭の中の光景やお話を、音として紡いでいくのは楽しいものです。

著作権の問題があるので本の中身はお見せできませんが、表紙だけなら良かろうと思うので、いくつかご紹介したいと思います。エロール・ル・カインの挿絵をたくさん載せた集大成のような本も出ています。このイメージ豊かな絵本を生徒さん達にも見て欲しいと思い、自宅のレッスン室の一角に並べることにしました(^ ^)

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2025年05月26日 23:22

福田美術館 伊藤若冲の激レアな巻物

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年始に行った京都の最終日、以前から行きたかった福田美術館に立ち寄りました。この美術館は5年前にできたばかりで、嵐山の渡月橋が見渡せる位置に立地し、美術館のカフェからは非常に良い眺めです。開館5周年ということで、世界初公開の伊藤若冲の巻物など話題性もあった展示でしたが、なかなか素敵な美術館で面白かったです。伊藤若冲の水墨画も多く展示されており、筆のタッチの見事さに魅入ってしまいました。展示物の撮影は普段は禁止ですが、たまたまお正月だったせいか、全展示物が撮影可能の日でラッキー。若冲は独特のマニアックな観察力で描く動物が面白いですが、今回の目玉の巻物は、なんと野菜ばかり52種類も描いた「果蔬図巻(かそずかん)」という巻物でしたo(≧▽≦)o  しかしこの巻物が面白く、若冲の手にかかると野菜が生き物のようにも見えます。野菜をずらりと延々描くなんて、なんてマニアック!!しかもこれを描いたのは若冲75歳。若々しいというか、執着心や拘りが何とも凄い75歳です。この「果蔬図巻」は、ヨーロッパの個人の所蔵だったものが、日本に里帰りして福田美術館のコレクションに入ったそうです。美術館所蔵となると、また見られる機会もありそうで嬉しい( ´∀`)。他にも鯉が飛び出て来そうな水墨画や、お得意の鶏や鳳凰の絵もありましたが、ちょっと面白かったのが僧侶の托鉢を描いた絵でした。ぞろりと列を成して托鉢する僧侶たちの表情が、それぞれ異なり、和気あいあいと楽しそうです。

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若冲の他にも竹が描かれた屏風絵もあり、水墨画の一筆書きのほとばしる様な生命力が見事でした。鶴亭浄光(かくていじょこう)という知らない画家の絵でしたが、失敗のきかない墨のタッチのシュッとした伸びやかさ、大胆さに目を奪われます。

鶴亭浄光「梅・竹図押絵貼屏風」IMG_6283_コピー  

京都で素敵な美術館を見つけた喜びに浸りながら、夕暮れ時の渡月橋周辺を散歩して帰途に着きました。またいつか来館することになるでしょう。

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2025年01月08日 23:12

映画「海の沈黙」

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久しぶりに映画館に行き「海の沈黙」を鑑賞しました。昔からファンだった倉本聰さんが60年も温め続けた集大成の脚本、そして題材が芸術の話となると、劇場で観ない訳にはいきません。北海道が舞台の倉本さんの富良野ドラマ3部作「北の国から」「優しい時間」「風のガーデン」は大好きで何度も録画を見返していますが、今回の映画はそれを上回る渾身の作品かもしれません。「美」というものの価値、芸術の真の評価とは何か?、など中身のある題材がテーマですが、キャストが名優さん達ばかり、その魂のこもった演技に惹き込まれ、こういう映画を多くの人に見て欲しいなぁと切に感じました。美術を題材にした映画なので、さて一体どういう絵が登場するのだろう?と興味深々でしたが、出てきた絵に驚きました。凄みがあり、佐伯祐三を思い起こさせるような荒々しくザラッとした質感、一度見たら忘れない存在感です。高田啓介さんという画家の作品で、見る者をざわざわと揺さぶる厳しい絵でした。実際にあの絵を生で見てみたい......

映画のストーリーとしてはミステリータッチで、人の愛憎、嫉妬心などが美術界に絡んで描かれています。テーマである芸術の評価や価値は、美術だけでなく音楽その他、どの芸術にも共通してつきまとう話です。世間で話題になったり、コンクールで賞を沢山取ったからと言って、その人の表現が人の心を打つかというと、それはまた違う世界です。音楽の演奏会でも、技術的にはとても達者で文句なし、でもなぜか心に響いてこない......ということが良くあります。心の中から感じるものを、素直に感じるまま表現し、イマジネーションに富んでいる人の演奏は、有名人でなくても感動することもあります。画家や作曲家は何もない無から心の生き様を形にしますが、そこには、その人に取ってとても大事な人の存在が潜んでいたり、それが心の根源になり得ることもあります。それらが集約されたような映画作品でした。

倉本聰さんがこの脚本を書きたいと思われたきっかけが、鎌倉時代に作られて重要文化財に指定されていた古陶器の壺が、実は現代の陶芸家の作品だったと分かり、重文から外された、という話だそうです。昨日まで皆が美しい美しいと言っていたのに、時代が違うとわかった途端、評価が一変して価値が下がるのは変じゃないか?と......  ものの価値は、それぞれの人がそれぞれの感性でもって、あぁいいなぁ、これ素敵!と感じることに意味があり、そこに評価がついてくるものですが、悲しくもメディアの報道に振り回されることもしばしば見受けられます。

芸術の価値とは何なのか、真の美を見極めるとはどういうことなのか?、こういう中身の濃い本物の映画が日本アカデミー賞の最優秀作品賞を取って欲しいです。私自身も芸術に携わる人間として、自分の感性でものを感じ、真の美を理解できる人間でいたいものです。そうそう、映画を見ながら「このチェロいいなぁ.....」と思っていたら、間接的に知っていて何度か演奏を聞いたことのあるチェリストの奥泉貴圭さんでした。音楽は住友紀人さん。

倉本聰さんの書く脚本にはいつも色々考えさせられますが、録画した以前のドラマがまた見たくなりました。画質の良い「優しい時間」の再放送を長年待っているのですが...... このドラマで登場した窯元「皆空窯」には何度も足を運び、少しずつ食器を集めて日々使っています。


    皆空窯「優しい時間」マグカップ   IMG_6165_コピー
  
           
                          


            
                 
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2024年12月09日 11:15

「モネ 睡蓮のとき」展

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上野の西洋美術館で開催中の「モネ 睡蓮のとき」展を見に行きました。睡蓮やモネの庭にまつわる絵ばかりが一同に展示されるという特殊なテーマの美術展です。モネが自身で造ったフランスのジェヴェルニーの庭の睡蓮を描いた絵は数百点あり、その一部が展示されていました。モネは印象派のドビュッシーとも深い関係があり、私の大好きな画家の一人です。お気に入りの複製画も3点ほど持っていますが、個人的には睡蓮のモティーフより、違う風景の作品に惹かれます。ただ、今回の睡蓮の絵ばかりを展示した美術展はなかなか面白く、モネの制作過程も良くわかり、惹かれる絵もありました。睡蓮の絵は数百点も描かれているだけに、あぁすごくいい!と思う絵もあれば、う〜んこれはイマイチ、と思う絵もあるように思います。ただ、確実に言えるのは、モネの睡蓮に対する執着心の凄まじさで、視力が衰えてからも抽象画のように具象化された睡蓮の庭を描き続け、最後の方は異様な妖気さえ感じます。

睡蓮の絵は個人的にそれほど好みでないとは言え、昔一度だけ行ったことのあるフランスのオランジュリー美術館の楕円形の睡蓮の間は、感性を刺激される圧倒的な作品群で、あれを見ずにモネの睡蓮は語れないなぁと思います。その部屋に入った途端に身体の深奥にあるものを揺さぶられ、ツーと涙がこぼれてしまったのでした(T . T) ふと異次元の世界に連れて行かれ、天井からの柔らかい日差しの中で睡蓮の花がまるでその場に溢れ出すような感覚というのでしょうか。本物の睡蓮よりも迫力や妖気のようなものが匂ってくる感じです。今回のモネ展を見ながら、モネのジヴェルニーの庭には一度絶対行かなければ.....と再認識しました(笑)

今回のモネ展では、オランジュリー美術館の睡蓮の間に似せた部屋があり、色々なタイプの睡蓮の絵が点在する形で展示されています。これはこれで趣向を凝らしたもので、素敵な睡蓮の絵があり、写真を撮っても良い部屋だったので人で溢れかえっていました。時期的にテレビで色々と話題になってしまった直後で多くの人が写真を撮ったりと、あまり落ち着いて見れる環境ではなかったのがちょっと残念ですが、幸せな時間を過ごせました。複製画の1つにちょっと興味を惹かれましたが.......今回はお預けかな.... 余談ですが、山形美術館で見た吉野石膏コレクションのモネの「サンジェルマンの森の中で」複製画を、どこか日本の会社が作ってくれないかしらん?と長年心待ちにしています。以前、山形美術館でその絵に惹かれて買った複製画はあまり良い出来ではなく......(>人<;) 最近の技術開発された複製画が欲しい.....(^◇^;) あの絵にもう一度会いたいなぁ......山形はちょっと遠いのだけど....

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2024年11月26日 23:40

おがさわらピアノ教室

【電話番号】 080-8132-4676

【住所】 〒177-0044
東京都練馬区上石神井3丁目

【営業時間】 <レッスン時間>13:00-20:30
<受付時間>11:00-21:00

【定休日】 不定休

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