室内オペラ「人魚姫」の公演
美しい音楽とウクライナの2人の歌手の思いの籠った熱演に、観客は惹き込まれ、会場もとても盛り上がりました。笠松さんの美しいメロディは、一度聴いたら忘れられない耳に残るもので、潤いがあります。お話は、アンデルセンの人魚姫の有名な話のストーリーなのですが、浄化的に終わらない人間的な最後の場面が面白いところです。
私はハープという楽器は詳しくないのですが、ハープがこんなに活躍する曲は聴いたことがなく、ハープという楽器の魅力と美しさにも目を見張ってしまいました。勿論、演奏者が素晴らしいのですが.....歌と弦楽器とハープという編成の音楽は珍しいですが、海の情景が美しく描かれ、ハープが大変効果的でした。できればもう一度、日本語版の生演奏を聴いてみたいです。
この室内オペラ「人魚姫」の英語版の初演は2019年にウィーンで行われ、その初演で人魚姫役を務めたウクライナ出身のナタリア・ステパニヤクさんというソプラノ歌手が、母国ウクライナで再演しようとして、一度はコロナで不可能になり、その次はロシアとの情勢で不可能になったそうです。軍事侵攻の戦時下にあるリヴィウで上演を目指していると聞いた日本の関係者が、支援したいと応えて日本での再演が実現したとのことでした。
戦時下という状況の中、音楽が心の支えになって活動している音楽家の思いが伝わる公演を聴いて、帰り道、北風の寒い日だったにも関わらず、心温まるものがありました。
2023年11月20日 11:05