映画「国宝」
夏頃からずっと気になっていたロングランの映画「国宝」を観てきました。上映時間3時間!という長い映画でしたが、飽きることなく食い入るように見入ってしまい、心にズシンと残る名画でした。吉田修一さんの小説「国宝」の映画化で歌舞伎役者の世界を描いたものですが、芸の道の奥深さ、また恐ろしさも伝わり衝撃的でした。音楽と歌舞伎の世界は違いますが、芸術の本質では共通するものがあり、あぁ私もこういう感情を感じたことがあったなぁと痛感する場面もありました。映画の中で主人公が、ライバルの務める舞台を見て努力では到底敵わない持って生まれた才能、頭で殴られるような衝撃を食らい、自らその世界を去るシーンがあります。世の中にこういう人っているんですよね...... 私も数十年前に一人、そういう異常な才能を持つ人に出会ったことがあります。人の演奏を聴いて、その人の中身が全部透けて見えてしまうような人。自分のそれまで培ってきたものが一瞬で変わり、自分のやってきた事が恥ずかしくてたまらなくなり、自分が嫌になるような、人生がガラリと変わってしまう、そんな一撃でした。ただそこで感じたもの、学んだものが私の原点となり、それまで見えなかったものが見えるようになり、今の自分に繋がっているのですから不思議なものです。あの時間がなければ私は音楽の深淵を知る事もなく演奏を続けていなかったかもしれず、今となっては人生の宝物です。
それにしても「国宝」のキャストの吉沢亮さんと横浜流星さんの歌舞伎の演技は圧巻でした。歌舞伎やお能の仕草や身のこなし、声の出し方など、まるで梨園の家に生まれ育ったような演技で、さぞ凄まじい練習をしたのだろうと想像を絶するものがあります。私は個人的には歌舞伎よりもお能の方が内面的で好きなのですが、歌舞伎も見てみようかなと思わせられました。歌舞伎役者の役者さんがキャストを務められたなら、すぐできるであろう歌舞伎の演技を、全くやったことのない俳優さんがよくもここまで人を感動させられる表現に辿り着けたなぁと感じます。身体の内から滲み出る色気、心の底から感じて役になりきる表現力。映画に圧倒されてガイドブックを買ってしまいました( ´∀`)
2025年10月20日 23:18