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ケマル・ゲキチ ピアノリサイタルを聴いて

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武蔵野音楽大学のベートーヴェンホールで開催された、ケマル・ゲキチ ピアノリサイタルを聴いて来ました。ケマル・ゲキチ氏は武蔵野音楽大学の客員教授でもあり、毎年のように日本に来日して演奏活動もしていますが、そのピアニズムは非常に強烈で、一度聴いたら忘れない、というインパクトの強さがあります。今までにも何度か聴いており、その強靭なタッチは記憶に新しいですが、非常に納得させられる演奏でした。

かつて、ショパンコンクールで、あまりにも強烈な演奏に審査が分かれてファイナリストに選ばれず、これに抗議した審査員が次々に審査を辞退する、という事件が起きたことは、プロフィールでも紹介されていて有名です。曲の解釈というのは難しく、自分なりの言葉にしたら、いわゆる正統派の演奏ではなくなってしまった、という事があり得ますが、聴衆からは支持され、世界各国を飛び回って活躍しているピアニストの一人です。

今回のプログラムは、ショパン、リスト、ゲキチ氏の作品、で構成されていましたが、前半のショパンは、とても美しいピアニズムでした。極上のピアニッシモのパッセージなど、非常に高い技術が根底にあることは勿論なのですが、自分の眼で作品を精緻に見極めているなぁ、というのが全体を通しての驚きでした。ショパンの中でも一番有名なノクターン作品9−2、華麗なる大円舞曲、子犬のワルツ、幻想即興曲、など、一見して大衆受けするようなプログラムになりがちですが、非常に客観的で静謐な、でも聴き手に語りかけ、心に沁みいる演奏でした。ショパンという作曲家の内面性が、さらに一層吟味され、深淵をみつめているような姿勢が、前半を通してずっと貫かれていたように感じます。

中でも驚いたのは、舟歌でした。左手の波を表す音形が、普通なら揺れるような感じで演奏される事が多いのですが、水の動きは感じるのだけれども、限りなく静かに水面が震えるような、まるで夢の中の遠い出来事を話しているような錯覚に捉われました。個性的な解釈にもかかわらず、スッキリと聴こえ、静かな映像作品を見せられているようでした。美しかったです♪(´ε` )

後半は、ショパンと対照的な個性のリストと、ゲキチ氏の作品でした。どれも聴衆が一体になるような演奏でしたが、ゲキチ氏の「対話」という曲が個人的に印象深かったです。この人は心の中に、神秘的な深淵を持っているんだなぁ、と感じました。ここまで音楽を追求して掘り下げるのか.....と非常に勉強になり、同時に自己反省もさせられた晩でした(-_-b)


                          


            
                 
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2024年07月04日 13:08

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